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代表あいさつ

江戸しぐさとの出会いはラジオでした。大学在学中より声の仕事に携わり、2003年に中小企業をテーマにした番組のパーソナリティを務めることになりました。日本の8割以上を占めるといわれる中小企業の、経営者の生き方の指標として、先人の知恵を探り、現代との共通点を追及していくなかで、江戸期の商人達の行動哲学に由来する「江戸しぐさ」を知ったのです。当時より普及に尽力されている越川禮子先生に師事しました。そして、江戸しぐさを基礎付ける江戸期の資料や書物を独学で研究しながら、ご依頼頂いた講演や執筆、取材等をお受けしてきました。
2009年に、若い世代にも江戸しぐさを発信する趣旨から著書の執筆依頼を頂くと、そのエッセイの出版をきっかけに活動の場が広がり、2冊目の著書出版以降、現在も、学校教育関係や企業など、全国色々なところでお話しをさせて頂いています。

私は、徳川家康公隠居の地、静岡市の駿府城近くで生まれ育ちました。先祖は山内一豊公ゆかりの菩提寺で住職をしていた縁から、祖父や祖母の影響で幼少の頃より日本人の心や伝統に触れる機会が多く、江戸しぐさは、私の心の中に自然と染み込んでいました。自分の気持ちを代弁してくれていると思うことがよくあります。いつしか、物事を判断する“ものさし”となっていました。
それは、江戸しぐさが決して特別なものではなく、ごく日常にある「当たり前だけどとても大切なこと」を、いつも思い出させてくれるからだと思います。お話する機会を頂いた方々への私の役目は、その“大切なことを思い出すきっかけ”であり、スイッチをオンにすることだと、おこがましくも日々の活動のなかで気づかされるのです。
誰かが人知れず悩んでいたり、嫌な思いをしないように。辛い出来事や、悲しい気持ちに負けてしまわないように。江戸しぐさは、あなたの心にそっと寄り添い、支えになることができます。私たちの先祖から大切に受け継がれた日本人の心を、江戸しぐさを通して呼び覚ませば、きっと解決への糸口が見つかるからです。
数多ある教えの言葉を通して江戸しぐさが伝えたい最大のテーマは“争いのない世の中”への思いと、そのための“人付き合いの仕方”つまり「共生の精神」です。
江戸しぐさの共生は、ただ寄りかかり合うのではなく、自立した者同士の相互扶助。日本人らしい道徳的な優しさの中にも、共倒れしないたくましい生き方をひも解いているのです。

「江戸しぐさ」の舞台は江戸ではなく、今この時代を生きている私たちが主役です。
江戸と現代は一本の同一線上にあり、その線はどこを切り取っても変わらず弛むことのない感性の糸。日本人が歩んできた心の道程です。
平成27年は、終戦後70年を迎えます。また、泰平の世を築いた徳川家康公没後400年の顕彰の年です。日本人にとって「平和」を考える節目となる今こそ、先人からの学びを今に活かし、豊かな社会を次世代に継承していくために、日本人らしい心豊かな生き方を見つめなおす時ではないでしょうか。
どうぞ、江戸しぐさの心があなたのその道しるべとなりますように。

平成27年2月19日
                山内あやり

江戸しぐさに学ぶおつきあい術
山内あやり著
「江戸しぐさに学ぶ
おつきあい術」

(幻冬舎)
江戸しぐさ恋愛かるた
山内あやり著
「江戸しぐさ」
恋愛かるた

(三五館)